作ったり考えたりの記録

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横浜美術館研修レポート(全文)

先日の横浜美術館へ研修の際の、岩手県美術館提出用レポートが出来たので、こちらにも全文を掲載します。
美術が好きな方と共有出来ればと思います。




【岩手県立美術館友の会解説ボランティア研修レポート】

記入者:
狩野直子 (解説ボランティアグループ)
実施日:平成25年11月15日
研修場所:横浜美術館 
 
研修内容:企画展「横山大観展―良き師、良き友」
     コレクション展鑑賞・解説参加



  朝7:33の新幹線に乗り、11時前に横浜美術館に到着した。今回の参加者は私を含め5名。
 私にとっては10年ぶりほどの横浜美術館であったが、みなとみらい線や、新しいショッピングビルが出来、いっそうにぎわいを増していたように見えた。


 到着後は、12:30頃まで「横山大観展―良き師、良き友」を拝観した。
 本展覧会は岡倉天心生誕150年、没後100年等を記念しひらかれたものであり、「良き師、良き友」をテーマに、それぞれの作家の作品表現や時代性などを読み解くという興味深い内容であった。横山大観と師匠である岡倉天心、また大観と同世代の画家、今村紫紅、小杉未醒、小川芋銭、冨田渓仙等の交流を通した明治・大正・昭和期の絵画を俯瞰するものであった。
特に海外へ扉を開いた後の時代の「絵画表現への挑戦」という意味で、若い画家たちが試行錯誤している様子が伺え、大変充実した時代であったことが感じられた。

 昼食を挟んで、午後は「コレクション展」鑑賞と、「ギャラリートーク」を拝聴した。
今回対応にあたって下さったのは、教育普及課の坂本さん。【エデュケーター】として教育関連の業務のなかで、コレクション展のギャラリートークなどをほぼひとりでなさっておられるとの事であった。

 ギャラリートークの中で扱った作家は三名。 これらを「生命の形」というテーマで読み解く。


小茂田青樹(1891-1933)「ポンポンダリア」
コンスタンティン・ブランクーシ(1876-1957)「空間の鳥」
ジャン・アルプ(1886-1966)「成長」


レポート
(いずれも横浜美術館所蔵。これらの写真はウェブサイト等で公開されているものを貼っています。通常美術館での写真の撮影は禁止されていますのでご注意下さい。


【命の瑞々しい様子をどのように表現しているのか】を三人の作家の目を通した「違い」を解説していただいた。
 小茂田青樹は「生々流転」として、ブランクーシは、「飛翔というイメージ」として、アルプは「有機的な形態の変化」として、それぞれの「自然」「いのち」を表現されていて興味深い。

 坂本エデュケーターは、コレクション作品に関連する図版を何枚も用意し、観覧者に分かりやすく解説していた。一つのテーマを柱に時代背景にまつわるストーリーを絡ませながら生き生きと解説する様子が印象的であった。「作家によるそれぞれの表現の違いを楽しみ、美術に触れることで、色んな視点や視野で物事を考えてほしい」とのお言葉からも、やりがいをもって臨まれている事を感じた。また、参加している方の真剣な様子からして、ギャラリートークを楽しみに足を運ぶ観覧者が沢山おいでになるのだと言う事も伺えた。



ギャラリートークの後は、別室にて坂本エデュケーターからお話を頂戴した。

 (注:以下に関しては箇条書きとして記す。Qは我々からの質問、Aは坂本エデュケーターからの解答。)


【ギャラリートークに関して】

Q1):今回のテーマは「生命の形」というものであったが、ギャラリートークの際の「テーマ」のアイディアはどのようにして生まれているのか?

A: ギャラリートークは「美術の見方の枠組みを外すこと」を目的としている。
 「好みや関心毎」を軸に、様々な要素や素材を集め拡げていくようにし、なるべくであれば「ストーリー」になるような内容となるようなテーマを考えるようにしている。
(全てが専門に関わる内容ではないので)時として自分の未知の内容の質問を受ける事があり、情報として【分からない事】が出てくる事もあるが、分からない事を恥じずに、後で調べたり、勉強したりして情報を補充するように心がけている。




Q2):人が極端に少ない時などはどうするか

A:ギャラリートークの良さは「気軽に参加出来る(気軽に抜けられる)」と言うところにあると思う。お客さんが主体的に取捨選択出来る所も魅力であり、人が集らなくてもめげずに解説を続けることが大事であると考える。 解説が終わる頃には、15人ぐらいに増えている事が多い。





Q3):ギャラリートークをする際の作品はどのように選んでいるのか

A:ギャラリートークで扱う作品は、基本的には学芸員の選んだ陳列作品に準ずる。コレクション展の場合には、学芸員による「展示の意図」が必ず存在するので、まず第一にそれを尊重して作品を選ぶようにしている。扱う作品は数年に一度展示されるものではなく、少なくとも年に一度は見られるような作品を選出するように心がけている。(せっかくトークで扱ったものが展示替えで数年先ま
で見られなくなるのは来館者にとってもつまらないであろうとおもわれるので…。注:日本画等は、年間の展示が限られるので、作品選びは慎重に行う)
 また、煩雑になりすぎないように三点に絞って解説する等 来館者が内容に集中出来る程度の数としている。




Q4):ボランティアによるギャラリートークはあるのか?


A:ボランティアによる「ギャラリートーク」自体は行っていない。
(基本的には教育普及部のスタッフにてギャラリートークを行っている。)
近年の鑑賞教育の高まりから、ギャラリートークが定期化したのは昨年からで、毎月第1 第3 第5金曜日の午後に行う事になった。



【ボランティアとの連携関して】


Q5):ボランティア勉強会についてはどんな工夫をしているか


A:来年2014年は、「横浜トリエンナーレ」が開催される。
「美術館スタッフと市民ボランティアがどのように関わり、仕事を協同いくか」ということが活動の軸になるため、ボランティアの勉強会を定期的に行っている。しかし市民が活動出来る曜日などは限られているため、スケジュール管理や調整については試行錯誤しながら行っている現状である。(月2回、各2時間程度、日曜日午前、月曜日夜など)

 現在は「横浜トリエンナーレとは何か」「(プロデューサーの)森村泰昌氏の作品はどのようなものか」というところからガイド育成の勉強会を企画している。それには適宜課題を用意し、参加してくれたボランティア自体が自発的に勉強出来るような内容のものを提示している。(例:レイ・ブラッドベリの「華氏451度」を読んでいただく、森村泰昌氏の作品展を見ていただく等)


横浜トリエンナーレに関しては、「展覧会のコンセプト」「ツアーガイド」「申し込み受付」「ディサビリティ対応」「外国人対応」などさまざまな窓口が求められるためサポーターシステム(50人程度のボランティアの参加見込み)を整備し、【人の集まる会場】になるよう準備をしているところである。


Q6):ボランティアの参加状況・人数構成などは?

A:子どものアトリエスタッフ(約30人)
 美術情報センター/図書の整理(約10人)
鑑賞パートナー(福祉 ディサビリティ対応) (約20人)
「横浜美術館コレクション・フレンズ」(1万円の賛助会員) (約80人)

(注)横浜美術館コレクション・フレンズは、横浜美術館のコレクション(収蔵作品)から1作品を窓口としてコレクションのサポーターとなる支援プログラム。参加費は、コレクションの 展示・鑑賞に役立てるとともに、緊急を要する修復や備品の購入に活用している。参加者には、いくつかの特典がある(年間フリーパス、フレンズの交流会、トークリレーなどが実施される)。


 ☆ギャラリートーク会場にも何人かボランティアさんがお見えであったが、熱心にメモを取ったり質問をしたりと、「市民が楽しんでボランティアをしている様子」を見ることができた。市民が参加しやすい仕組みづくりがなされているのだと言う事を感じた。





【横浜美術館の収蔵品:展示室等に関して】

Q7):収蔵品の指計

A:「横浜市」ならではの特徴のある作品を収集している。
明治の時代に開国した「国際都市」としての側面が感じられる作品を広く集めている。
★開港、異文化交流的な作品
★写真発祥の地としての写真作品
★三渓園(横浜市中区本牧三之谷にあり、実業家で茶人の原三溪によって作られた日本庭園。国の重要文化財建造物10棟、横浜市指定有形文化財建造物3棟を含め、17 棟の建築物を有し、広大な敷地の起伏を生かした庭園との調和がはかられる。)に関連した日本美術院関連の作品
★ダダ シュルレアリスム作品
★「現代」を俯瞰出来る作品


 横浜美術館は、平成元年に第三セクターの形としてスタートした。
展示室の他に「子どものアトリエ」という子ども向けの造形アトリエを併設している。「造形を通じた自立心の育成」を狙いとし、対象は、幼稚園、小学校、特別支援児童が中心となる。
 教育プログラムの一つとして市内の学校と連携して使用する事が出来るため、かなり広く活用されている様子であった。(予約がかなり先まで埋まっているとのこと)


 全ての研修は午後4時半に終了、適宜コレクション展を見る等して、解散となった。



【感想】

今回の研修は大変貴重な話が伺え、とても勉強になった。
対応して下さった坂本エデュケーターは、親しみやすい言葉で作品を紹介しておられたのが印象的であったし、美術館を訪れる人々も、広い視野を持ち、好奇心を持った方が多いと感じた。
 私自身はまだ解説の手伝いすら出来ていないのだが、今後の活動への強いモチベーションとなった。美術史的な知識にこだわるのではなく「見方の一つとしての切り口」を来館者に提示し、驚きや感動を蓄積して行く、そういう態度が大事なのだと言うことを感じた。
 
次回の「横浜トリエンナーレ」も見てみたいと感じた。

今回は参加させていただきありがとうございました。
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■ プロフィール

nyororo

Author:nyororo
にょろろ(狩野直子)
射手座 B型。

高校の美術教師として勤務後、2007年よりフリーで仕事をはじめました。 現在は狩野直子名義で水彩やイラストの制作、スケッチ教室で講師をしています。
エコールドマシェリ「毎日を彩るスケッチ日記」
JEUGIAカルチャー盛岡「透明水彩スケッチ」
マシェリにて月一回の連載「季節を彩る岩手の野鳥」のイラストを描いています。

にょろろ名義では手帳や時間管理のイベントやオフ会を主催したりしています。
「ジブン手帳公式ガイドブック2017」(実務教育出版)「測量野帳スタイルブック(エイ出版社)藍玉さん著 「まずは書いてみる」(KADOKWA)「手帳事典2018」(玄光社)「に掲載されました。「箇条書き手帳」でうまくいく 初めてのバレットジャーナル (Discover21)に掲載されました。

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