作ったり考えたりの記録

Perspective drawings

だれかの為の美術準備室でありたい

 この4月からマシェリの教室の他に、デッサンの個人レッスンを始めました。

 生徒は私が美術教師時代の元教え子なのですが、数年前バッタリ盛岡で出会い、時間があるときにはちょくちょくお茶を飲んだりする仲となりました。

 今は23歳ぐらいになった彼女は高校生の頃美術部に居ました。
 おとなしいけれどとても絵の好きな子で、当時は(絵というよりも)「オタ絵」を好む傾向が強かったように記憶しています。(私自身は「どんなにキャラクターが描けても、建物や小物の形が描けなければキャラクターが生きないんだから、オタ絵でもいいからもっとデッサンをやっとけ」という話をしてきたつもりだったけれど、美大受験でもない限りデッサンをするのは難しいと感じてしまったのかもしれません。)私は彼女の学年の卒業を見届けずに退職してしまったので、その後彼女に会うなんて思っても見ませんでした。2011年の秋までは。


 宮城の沿岸で就職をした彼女は津波の被害に遭いました。
働いていた場所も被害に遭い仕事も失いました。私と会ったとき、知り合いもいない盛岡で一人で頑張っていました。
 ちょうど私も祈りの灯火の活動をしていた頃だったので、一緒に灯籠作りをしたり、会場作りを手伝ったりしながら色んな話を聞きました。
 津波のときの詳しい話は聞かないことにしていますが、「自分が使ってた画材や描いていた絵が無くなって悲しかった」「もうなんか、どうでもよくなってしまった」と言っていた事が印象的でした。
 
 そんな話を聞きながら「絵を描くのは辞めずに続けなよ」といいました。

悲しくても生きて行かなきゃいけないべ。
だって、海はアナタの命を奪わなかったんだから。


 わたし自身もしばらく絵を描いたりする気分にならなかったのですが、彼女にそんな話をするうちに、自分も辞めずに続けないとダメだよな〜、と思うようになりました。
 

 そんな中、今年の3月のある日、二人でカレーを食べに行った時の事。
「先生、私やっぱりもっとデッサンをやればよかった」
「だってデッサン嫌いだったじゃん(笑)」
「でもやっぱりデッサンが出来ないと描けないって思うんですよね。何を描くにも基本が大事だって」
「・・・それ、高校のときワタシ言ってたじゃないのよ」
「先生、私にデッサンを教えてくれませんか」
「なぬ…うーん。でも自宅に教えられる場所は居間だしな〜。じゃあ、通信教育的に、課題を出してウチで描いてもらって定期的に喫茶店かどっかで会って直し方を教えるってのはどうだべ?」

という感じで1ヶ月間自宅でデッサンに臨んでもらいました。


2013032722370000.jpg
(最初に課題として自宅で描いてもらった牛乳パック)


2013050720390001.jpg
(アドバイス後、形の取り方をアドバイスし現在描いている牛乳パック)


1回アドバイスしただけで、かなり上達したと思いませんか?!
2枚目はかなり形の構造を意識してより集中して対象を見つめている絵となったように思います。本人は仕事の後、夜の時間を使ってからしか描けないとのことだったのだけれど、よく観察出来るようになってきたと思います。


(マシェリの初心者向けの趣味の講座は「たのしく、優しく」に徹していますが)デッサン力をつけたい人にちゃんと教える場合には優しくしない事にしています。

 私の考えは「デッサンは基本的な見方さえ分かれば見違えるほど上達する」です。「才能」などではなく、単なる技術的な訓練に過ぎません。だから一定の訓練さえすれば、殆どの人が描けるようになります。
 時々「絵が描ける=才能がある」と言われる方がおられますが、(習っているのに)いつまでも上手くならないと感じるのであれば何処を見て描けばいいか、どのような画材の使い方をすればいいかを研究する必要があります。もしも出来るようにならないとすれば、出来るようになるまでやらなかったに過ぎません。

 ある程度時間をかけて継続していけば単純に時間に比例して技能が身に付きます。ヘタだと思って途中で辞めてしまうのも一つの手ですし、辞めたからといって明日死んでしまう訳ではありません。
でも私は「才能」だとか「もともとの素質」という曖昧なもののせいにせずに取り組んでほしいなぁって思うんですよね。だって才能が無かったらそれを味わったり楽しんだりする機会を与えられないっていうことでしょう。
 だからチャンスがあるならやってみる、ただやってみるんじゃなくて、ちょっとハードルの高い事にもチャレンジしてみることがいろんな楽しみを広げてくれるきっかけになるんだと思っています。

 デッサンに限らず続けてさえいればなんとかなるもんです。自分も途中に居る段階なので、これからも訓練を続けます。


 このたび例の机がやってきたおかげで、居間ではなく私の部屋でイーゼルを立てモチーフを組むスペースが出来そうなので彼女には今月からウチでデッサンをしてもらうことになりました。そんなわけで彼女にはガッツリやってもらうつもりであります……自分にとってもいい刺激になるので、厳しくありつつも応援して行きたい。

 デッサンなどはさっさと身につけて、あとは自分の表現を追求すればいいんですよ。
 そこからオタ絵に行ったっていいだろうし、また別の表現に興味を持つかもしれないんだし。私なんかすぐに追い越して【自由に描ける】実感を持ってくれたらいいなあと思います。

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■ プロフィール

nyororo

Author:nyororo
にょろろ(狩野直子)
射手座 B型。

高校の美術教師として勤務後、2007年よりフリーで仕事をはじめました。 現在は狩野直子名義で水彩やイラストの制作、スケッチ教室で講師をしています。
エコールドマシェリ「毎日を彩るスケッチ日記」
JEUGIAカルチャー盛岡「透明水彩スケッチ」
マシェリにて月一回の連載「季節を彩る岩手の野鳥」のイラストを描いています。

にょろろ名義では手帳や時間管理のイベントやオフ会を主催したりしています。
「ジブン手帳公式ガイドブック2017」(実務教育出版)「測量野帳スタイルブック(エイ出版社)藍玉さん著 「まずは書いてみる」(KADOKWA)「手帳事典2018」(玄光社)「に掲載されました。「箇条書き手帳」でうまくいく 初めてのバレットジャーナル (Discover21)に掲載されました。

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